fugitive from justice
~正義からの逃亡者~
第2話

作者 管理人シン

 数日後、彼は広大な草原をうろついていた。もとい、探していた。

「お、そこの姉ちゃん、俺と酒場で飲もうぜぇ?」
「お断りよ♪」
「つれないな~」

 楽しめそうな飲み相手を、である。

「今日も収穫なしか……」

 毎度のことではあるが、この結果に嘆息するカズヤ。そろそろ街へ帰ろうかと考えていると、

「ご、ご主人様! PKのイノセントが入って来たでスラ!」
「……そうか」

 カズヤの目つきが鋭くなる。長い間一緒に過ごしている相棒である。その声の具合から、相手の実力を想像することは容易であった。

「……逃げておくか……」

 カズヤは慎重であった。別にPKでもなければ討伐隊にも属していない彼は、狩られることによるリスクは少ない。しかし、彼は常に狩られないように行動をしてきた。
 足早に、しかし周囲の警戒は決して怠らずに、町へと急いだ。

「っ……ありゃ……首じゃねぇか……」
「とても強そうです……」

 スライムが声を震わせる。運悪く行く道がぶつかり合ってしまったらしい。広大な草原では、互いの姿はすぐに視認できてしまう。

「こりゃマズイ……狩られたくねぇぞ……」

 カズヤが、口の中でつぶやくように言った。カズヤの真正面に対峙したイノセントは、杖を持っていた。どうやら魔法使いらしい。

「(それよりも……)」

 間合いを計りながら、カズヤは彼の手にある杖に目をやる。

「(何なんだ……この杖は……!?)」

 彼は数多のPKとの戦闘や経験の中で、様々な武器を見てきた。ラディの武器名を言い当てることが出来たのも、その経験の賜物である。しかし、そのカズヤでさえ、イノセントの持つ杖が一体どのような過程を経て、合成され、作られたのかを理解することは出来なかった。

「…………」
「…………何?」

 カズヤの思考は中断された。その、男女ともつかない端正な顔についている二つの瞳が、カズヤを見据えながら、ゆっくりと後退したからだ。カズヤは身構えたまま、その様子を見ている。

「(…………俺に恐れをなした……? まさかな……)」

 イノセントに体力を消耗している様子は無かったし、カズヤと確実に互角以上の強さを誇っているのは、首、つまり賞金首という称号、そしてその雰囲気から明らかであった。

「どういうことだ……?」

 草原の奥へと消えていくイノセントに、カズヤは鋭い視線を送っていた。

「……」

 腑に落ちないことがいくつもあったが、カズヤはイノセントが消えていったのと別方向へ歩を進めた。

「うふふ……カズヤさん、久しぶりに見つけたわ……」

 その背後で、カズヤを見据えつつ、妖艶に笑う女が居たことに、カズヤは全く気付かない。

あとがき
伏線思いっきり増やしました(何 一回公開してたヤツを、ココまで派手に書き直してるのは僕ぐらいでしょうか……。


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