fugitive from justice
~正義からの逃亡者~
第1話

作者 管理人シン

「さて……と」

 そう呟きながら、森の中を歩いている男の名はカズヤ。「職業」は侍で、堅物のような印象を受けるが……。

「可愛い子ちゃんは何処かな?」

 軽い男である。
 そんな彼の趣味は、PK――プレイヤーキラーと呼ばれる、他のプレイヤーを倒す――狩る人間と「遊ぶ」事である。

「ご主人様! PKのラディ♂が入ってきたでスラ!」
「ちっ、野郎か……。まぁ、いい。遊んでやるかぁ」

 そのラディという名のPKは、獲物を探しつつ、そして当然周囲の警戒も怠らずに、森の中をうろついていた。
 カズヤは、油断しきった様子で、ラディの前を横切るようにして、フラフラと現れた。

「獲物みっけ♪」
「…………」

 ラディは、嬉々とした様子で、その身の丈ほどもある巨大な剣を構えた。
 カズヤは、その声でようやく彼の存在に気づいたように、黙りこくり、無表情でラディを振り返る。

「たかがクレイモアで……」
「なっ……!?」

 ラディはたじろいだ。自分が鍛え上げた自慢の武器、その名を言い当てられたのだ。
 言い当てたことは、相手の態度で一目瞭然である。カズヤ唇の端をつり上げるようにして笑う。

「俺を狩れるのかなぁ?」
「ナメとんのか? 討伐隊でも無いのによぉ!」

 ラディは、怒りを露わに、カズヤを両断せんと切りかかる。

「喰らうわけには、いかないねぇ」
「さ……鞘で、だと!?」

 カズヤは、薄笑いを浮かべながら、その大剣を刀の鞘ごと受け止めた。

「なるほど……“オーラ”か……」
「御名答♪」

 自分の技を見抜かれても、カズヤのその余裕は消えない。逆に嬉しそうである。スリルを愉しむかのように。
 “オーラ”……聖なるオーラを身に纏い、防御力を強化する特殊技である。カズヤは、鞘にオーラを集め、攻撃を防いだ。

「だが、そんなものはあっさり破れるぞ?」

 ラディは冷静さを取り戻しつつあった。攻撃力を高めるべく、その巨剣を大きく振りかぶり、攻撃に移ろうとしている。

「お前にゃ出来ない」

 カズヤは、ヘラヘラと笑いながら答える。
 再びラディの額に青筋が立つ。

「ふざけ……!!」
「ほぉら、出来ない出来ない」

 ラディが剣を振り下ろした時、その倒すべき相手は既にその場には居なかった。

「…………っ」

 言葉さえ発することも出来ずに、ラディはその場に崩れ落ちた。
 そしてその背後に、刀を収めるカズヤの姿があった。


「…………これでよし、と」

 そして、カズヤは、ぐったりとしたままのラディを、ポニーの上に乗せた。
 泡を吹いて気絶はしているが、彼はちゃんと生きていた。

「んじゃ、頼んだぞ。コイツを街まで届けるんだ」

 ポニーは、うなずくような仕草を見せると、颯爽と町のほうへ駆けて行った。

「さて、俺らも帰るとするか」
「ご主人様……」
「どうした?」

 カズヤのことをご主人様、というのは、カズヤのカンパニーのスライムである。先ほど、PKの襲来を告げたのも彼(?)である。

「どうしてご主人様は、討伐隊に志願しないのですか? ご主人様はとても強い。ほとんどのPKを圧倒しているのに……」
「どうも討伐隊は好かねぇ」
「きっと女性にもモテモテですのに……」

 スライムが嘆息混じりに言う。

「それは非常に美味しいけど、却下だ」
「うぐぅ……」
「叩き切るぞ?」

 一瞬で抜いた真剣を、スライムに突きつける。

「ごめんなさい……」
「萌えがないよねー、萌えがぁ!!」
「ひぃぃぃぃ!!」

 訳のわからないことを言いながら、不気味な笑顔を浮かべ、スライムの体を、真剣の「みね」でポヨポヨと叩いている。
 もしかしたらカズヤには少々変わった性癖があるのかもしれない。

「何か言ったかなぁ?」

 いえ、何も。

あとがき
うわぁ、今更って感じですね……。
微妙に改訂されてます。ここらへんは全然微妙です(謎


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