fugitive from justice
~正義からの逃亡者~
第8話

作者 管理人シン

「とりあえず言えることは……」
「やっと喋る気になったか」

 少々年をとったように思えるビレッジマーシュが、ぼそり、ぼそりと口を開いた。ちなみに、この間に数多の拷問があったのではあるが。

「イノセント……だっけか……アレは追わないほうがいい」
「……なるほど、そっちの話か。理由は?」

 ようやくビレッジマーシュの口を割れたという優越感からか、カズヤはニヤニヤと話を聞いている。

「どうも厄介な連中に繋がってるみたいでな……」
「なーんだそれ……」

 そう言ってカズヤがベッドの上で伸びをした瞬間、

「おっじゃましまーす」

 場違いな声が、カズヤの家に響きわたる。
 端正な顔立ち、そしてそれに不釣合いな、歪みきった笑み。

「に、逃げろ!!」

 ほとんど叫ぶようにしてビレッジマーシュが言う。カズヤは呆然としている。

「やっと見つけたよ? ビレッジマーシュくん」
「もう来るなつっただろうがよ……」

 どうやら自分だけが蚊帳の外に居るようだ。様子をうかがうことにする。

「で、ビレッジマーシュよ。こいつは何だ? フレンドリーってわけでもなさそうだし」
「その通りだよ、さっさと逃げろ!!」

 ビレッジマーシュは、既に自分の武器を構え、臨戦体勢をとっていた。それは相手方も同じだった。カズヤだけが、その流れに取り残される形となった。

「やっぱりお前ら危険だわ。ココで死んでもらうよ?」
「はぁ……?」

 やはりカズヤには話が見えてこない。男は嘲るような笑みを浮かべている。それが、カズヤの神経を逆撫でした。

「とりあえず、事情を話してもらおうか?」
「…何、やる気?」
「カズヤッ!!」

 言い終わるか終わらないかのうちに、男はカズヤに詰め寄った。ビレッジマーシュが叫んだ。

「……弱いな、お前」

 カズヤは鼻で笑って言う。カズヤには確信があった。

「はぁ? 状況わかってんの?」
「わかってるさ」

 部屋に乾いた音が響く。カズヤ以外の2人が絶句する。

「なっ……」
「得物も必要ないってな」

 普通、侍は刀を主な武器とする。侍にとって刀は無二の武器であるはずだ。今、カズヤはその刀を地面に放った。男が一瞬、ためらうように動きを止める。

「ふざけやがれ!!」

 それもつかの間、男の顔は醜くゆがみ、一気にカズヤに詰め寄り、短剣を垂直に振り下ろす。

「ふざけるのは趣味じゃないんだよ」

 はじける様な音がすると、短剣を握った右腕が大きく横に開いた。カズヤが思い切り腕をはたいたのだ。直線的な力は、横からの力に弱いものである。

「ば、馬鹿な!」

 男は信じられないものを見たというように、これ以上ないほど大きく目を見開く。
 すかさずカズヤは構えて、男のみぞおちに一気に拳を突っ込んだ。

「ぐぶぇ……」

 肺の空気が全て飛び出し、嗚咽と吐気が一気にこみ上げる。ビレッジマーシュは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。

「これが……カズヤの本当の実力……」

 自分より強い男を、その男を素手で圧倒している男を、そして、何も出来ない自分を噛み潰すかのように。

「が……はっ……」

 前のめりになっている所へ、思い切り顔面に蹴り飛ばす。骨の軋む音と共に、男は後ろへ吹き飛び、出入り口のドアに激突した。ちょうどドアに寄りかかるように、ずるずると崩れ落ちる。端正だった顔は、鼻が曲がり、血がこびりついていて、原型を留めていない。

「さて……と?」

 カズヤは落とした刀を拾い上げ、鈍く光る刀身を抜き、男の鼻先にまで近づけた。

「まだ気絶してないだろ、さぁ、質問の時間だ。……お前は何者だ?」
「きさ……ま……」

 男の目つきはまだ死んでいない。声は出ないが、その闘争心はビレッジマーシュにも、当然カズヤにも伝わる。

「さぁ、答えろ!」
「誰が……言うか……」

 刀の切っ先が、男の頬に当たる。刀の切れ味は見事なもので、触れただけで薄く血が流れ出た。

「カ、カズヤ、こいつは単独で動いているわけじゃない!」

 ようやく我を取り戻したビレッジマーシュが、必死の形相でカズヤに向かって叫んだ。

「そういや、お前は知ってるらしいな、こいつの事。何なんだ?」

 カズヤがビレッジマーシュの方に顔を向けて質問する。

「バカ、ちゃんと見張ってろ!! コイツら、『こっち側』じゃな……」

 ビレッジマーシュの言葉は、轟音にかき消された。

あとがき
7話のコピーしたまんまでした……○| ̄|_
ぁ、次の話はこれの続きではありません(最悪な予告)


管理人シンへの感想はこちら
sin_mysister_kaho@yahoo.co.jp